こんにちは、坂バカ理学療法士のわさおです。
ロードバイクのサドルフィッティングって悩みますよね。
高すぎるような気がしたり、低すぎるような気がしたり、感覚がアテにならないこともあります。
そんな時は、なるべく客観的な指標がほしいものです。
今回のテーマは、サドルフィッティング(高さと前後位置調整)の基本と方法についてです。
サドルフィッティングに迷ったら、まずは基本に忠実なサドル位置にしましょう。
サドル位置の基本
まずは一般的に言われる基本のサドル位置をご紹介しましょう。
この”基本”をベースにサドルの位置を微調整していくのが、フィッティング時の流れになります。
サドルの高さ
股下(cm)×0.885がサドルの高さの基本です。
股下の長さは壁際に立って股の間に付箋などで印をつけた後に、地面と印の距離を測れば一人でも測定できます。
その長さとクランクの中心部からサドルの上端までの距離が一致するようにサドルの高さを調整しましょう。
サドルの前後位置
サドルの前後位置はちょっと難しいです。
実際にサドルに跨ってペダルに脚をおいた状態で調整しましょう。
以下の項目に合うように位置調整をしてください。
- ペダルが3時の位置の時に膝の真下にペダルの中心がくる
- ペダルが6時(下死点)の時に膝が軽く曲がる
一人でやる場合は固定ローラーや鏡またはカメラが必要になります。
出来れば誰かに協力してもらった方がスムーズに調整できますよ。
膝の真下かどうかよくわからない場合は、紐になにか重さのあるものを吊るして、膝から垂らすとわかりやすいですよ!
サドルフィッティングの基本は以上です。
ここから目的や自身の体に合わせてサドルの位置を微調整していきます。
詳しく説明していきましょう。
サドルの高さはどう決める?
高くするメリット、デメリット
高くするメリット
サドルを高くするメリットは、ケイデンスを上げやすくなることです。
サドルを高くすることで上死点をスムーズに通過できるようになるからです。
上死点では脚を高く持ち上げないといけません。
重力の影響で、普通は脚を素早く下げる(踏み足)よりも、脚を素早く持ち上げる(引き足)の方が大変です。
ですので、ケイデンスを上げる時は素早く上死点まで脚を引き上げるスピードが重要になります。
サドルが高ければ高いほど、上死点で脚を高く上げる必要がなくなり、スムーズにペダルを回転させられるようになります。
そのためサドルが高いとケイデンスを上げやすくなるんです。
ケイデンスが高くなりやすいクリテリウムで、サドルを高めにしている選手が多いのはこのためです。
ちなみに、下死点で膝が伸び切っちゃうほどサドルを上げると逆にペダリングしにくくなるので注意です(^_^;)。
高くするデメリット
サドルを高くするデメリットは、以下の3点です。
- 股関節の筋肉が使いづらくなる
- 重いギアを踏みづらくなる
- 空気抵抗が増える(若干ですが)
先ほどご説明したように、サドルを上げれば上死点で脚を持ち上げる力が少なくなります。
でもこれは、筋肉を鍛えるという意味では逆効果です。
筋肉は使わないと劣化しますので、サドルを高めにしていると、引き足に必要な腸腰筋という股関節の筋肉が弱くなってしまいます。
使いづらくなるのは、引き足に使う筋肉だけではありません。
またペダルを力強く踏み時に使うハムストリングスという筋肉も働きにくくなってしまいます。
この筋肉は脚を深く曲げた状態の方が力を発揮しやすい性質があります。
※ジャンプする時に、最初に膝を深く曲げるのもこういった筋肉の性質のためです。
そのためサドルを上げて脚(厳密には股関節)の曲がりが少なくなってしまうと、ハムストリングスが働けなくなってしまうのです。
そうなると、平地では問題ありませんが、激坂の登坂時に影響が出ます。
以上の理由から、サドルを上げると股関節の筋肉が使いづらくなって、重いギアが踏みづらくなってしまいます。
また補足ですが、サドルを上げると頭が高くなる分、空気抵抗も若干増えます(^_^;)
低くするメリット、デメリット
基本的にはサドルを高くするメリット、デメリットの反対です。
サドルを低くするメリットは、股関節筋を使いやすくなり、重いギアが踏みやすくなることです。
初心者はサドルを低めにした方がいいのは、足を地面につきやすいからというのもありますが、股関節筋を鍛えるという点からも合理的な話なんです。
トレーニングではサドルを低めにしておいて、大会前だけサドルを高めにするという戦略をとる選手もいるそうです。
また、空気抵抗も若干少なくできます。
反対にデメリットは、ケイデンスを上げづらいことです。
サドルが低いと股関節をかなり深く曲げないといけないので、この状態でケイデンス150rpmを維持するのはなかなか大変です。
以上がサドルを高さを変えるメリット、デメリットです。
これらを踏まえて、ご自身の走り方に合ったサドルフィッティングをしていきましょう。
高さの調整方法
まずはサドルを基本の位置にした上で、以下の基準に従って位置調整をしましょう。
- サドルを上げる→クリテリウムによく出る、坂には登らない、ハイケイデンス命
- サドルを下げる→股関節筋を鍛えたい、よくヒルクライムをする、レースには出ない
サドルを上げる場合は、重いギアを踏みづらくならない程度にしましょう。
近所の坂をアウタートップ、シッティングで登ってみるとわかりやすいですよ。
サドルを下げる場合は、ケイデンスを上げづらくならない程度にしましょう。
ケイデンスを100rpm以上にした時に、違和感がなければいいでしょう。
客観的と言いつつ最後は感覚の話になってしまうので申し訳ないのですが、一度やってみてください。
よくわからなければ、基本の位置のままにしておきましょう。(むしろ大半の人は基本の位置でOKです)
サドルの前後位置はどう決める?
前に移動するメリット、デメリット
サドルを前に移動するメリット
サドルを前に移動するメリットは以下の2点です。
- 上半身を起こしやすくなる
- 瞬発的な力を出しやすい
上半身を起こしやすくなるのは、実際に椅子で試してもらうのが早いです。
椅子に深く腰掛けた状態でハンドルを握るように体を軽く前に倒し、手を前に出しておいてください。
そこから手の位置は変えずに、お尻を前にずらして浅く腰掛けてください。
この時上半身が起きたのが分かりますか?
サドルを前に移動すると上半身を起こしやすくすることが出来るのです。
初心者にとっては上半身を起こす目的でサドルを前に動かしてみるのも有効かもしれませんね。(可能ならまずはハンドルを高くしましょう)
次に、瞬発的な力を出しやすい理由をお話しましょう。
簡単に言うと、大きな速筋である大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)が使いやすくなるからです。
ペダルが3時の位置にある時に、膝がペダル軸の真上にある状態が基本でしたね?
サドルを前方に移動すればするほど、膝が前に出た状態になります。
そして、実は大腿四頭筋は、膝が前に出ていれば出ているほど力を発揮しちゃう筋肉なのです。
大腿四頭筋は、持久力はからっきしなのですが、スプリントなどで大活躍します。
競輪の選手やスプリンターの太腿が太いのはこのためです。
クリテリウムなどのように短い距離で瞬発力が求められるレースなら、サドルをあえて前に移動するのが有効です。
サドルを前に移動するデメリット
基本的にはサドルを前にするメリットと反対のことが出来なくなるのがデメリットです。
要するに、上半身を深く前傾しにくくなり、持久力が落ちます。
持久力が落ちる理由について、詳しく説明しておきましょう。
先ほどサドルを前に移動すると膝が前にでるため大腿四頭筋が働きやすくなるという話をしました。
しかし反対に、他の筋肉は働きづらくなります。
特に持久系の筋肉が多い股関節周囲の筋肉が働きづらくなってしまいます。
つまりサドルが前すぎると、大腿四頭筋に頼ってペダリングになりすぐに疲れてしまいます。
ヒルクライムや長距離走行のような、持久力も必要になる場面ではサドルを前にしすぎるのはデメリットだと言えます。
後ろに移動するメリット、デメリット
前に移動するメリット、デメリットの反対です。
後ろに移動すれば深い前傾がとりやすくなり、持久系の股関節筋が働きやすくなります。
反対に、上半身を起こしたり、瞬発的な力を出しにくくなるというデメリットがあります。
サドルの前後位置は、よっぽど偏った走り方をするのでなければ、基本の位置で十分です。
基本の位置から変えるのであれば、これらを踏まえた上でフィッティングするようにしてください。
前後位置の調整方法
サドルの前後位置はサドルの高さに影響を受けますので、必ずサドルの高さを調整した後に行ってください。
まずは基本の位置にサドルを合わせましょう。
その上で、以下の条件に合う人はサドルを0.5cmずつ前に移動させていきましょう。
- クリテリウムがメイン
- 50km以上走ることはほとんどない
- 前傾姿勢がしんどすぎて手や腰が痛くなる
以下の条件に合う人は、サドルを0.5cmずつ後ろへ移動させましょう。
- 下ハンドルを多用しており、もっと深く前傾したい
- ヒルクライムは低ケイデンス高トルクで登るタイプだ
- 太腿の裏側が使えず、いつも太腿の前側ばかりが筋肉痛になる
注意点は一度に1cm以上移動させないことです。
まずは0.5cm移動させた状態でしばらく走ってみて、物足りなければ追加で移動させるようにしましょう。
少々面倒ですが、急にポジションを大きく移動させると体を痛めるリスクがあります。
一度痛めた体は治るまでに時間がかかる場合があるので、ここは慎重に進めましょう。
サドルの傾きは水平が基本
最後にサドルの傾きについて少し触れましょう。
結論から言えば、99%の人は水平で大丈夫です。
傾きを変えなければならない1%がどういう人か気になりますよね。
それは坂しか登らない人や、ダウンヒルしかない人です。
坂道だとサドルが水平のままだとまっすぐ座れませんので、それに合わせてサドルを傾けた方が安定します。
ただし、その分平坦は走りにくくなります。
普通はクライマーでも移動の時に平坦を走りますので、あえてサドルを傾ける必要はありません。
本当に坂道だけに特化したバイクセッティングをする人以外は、サドルの傾きを考える必要はないでしょう。
ヒルクライムに特化したポジションはこちらの記事で紹介しています。
まとめ
最後におさらいをしましょう。
サドルフィッティングの基本は以下の通りです
- 高さは「股下の長さ×0.885」
- 前後位置は「ペダルが3時の位置で膝の真下にペダル軸がくる」かつ「ペダルが下死点で膝が軽く曲がる」
これらを満たすようにまずはフィッティングをしましょう。
その上で走っているうちに不満が出るようであれば、今回紹介したメリット、デメリットを踏まえながら細かい調整をしてみてください。
まずは高さをいじってみて、その後に前後位置をいじってみるとスムーズにフィッティングできますよ!
ちなみにクリテリウムによく出る人は、サドルが高く前方になっている傾向があり、クライマーはサドルが低く後方になっている傾向があります。
ぜひ参考にしてください!
最後までお読みいただきありがとうございました。